公開MCネタ帳(2020.5.31)1分で名著
本当に久しぶりに名著に出会えましたのでご紹介。活字離れの庶民派ギタリストにも、それほど苦もなく読めるのではないでしょうか。私は2日で一気読み。
著者のブレイディみかこさんは日本出身の方でイギリス在住、ライターをしながらの保育士。ご主人はイギリスの方で、息子さんは一般的に言う日英のハーフの中学生。息子さんが通う中学校は日本で言う公立学校で多国籍の生徒たちがいる。中学生の感性を通して、国籍とか人種、表現や言葉など、人権の根本的なことを考えされられる名著。
ちなみに先ほど「一般的に言うハーフ」と表現しましたが、このことも作中に言及されている。国籍の違う夫婦の間に生まれた子は、なぜ「ハーフ=2分の1」になってしまんだろう、最近は気を使って「ダブル」とも言われるけど、「2倍」というのも変な感じ、別に親がどこの出身であっても「One=一人」であることは変わりないのに…と息子さんが言っています。
私も普段は「○○人」という表現は避けています。以前、同じ職場のチームにいたブラジル日系3世の方が、『外人』と言われると「人間ではない」と聞こえる、と言っていました。同じ感じ方はこの作品にもありました。こちらに差別のつもりがなくても相手が感じることもあるのだから、私は「○○国籍の人」というように気をつけています。国籍であるのなら法律上の所属であって、「人」としての隔たりをなくすようにしたいためです。
私が一番に印象に残っているエピソード。息子さんが通う中学で、某国出身の同級生が差別的な発言を繰り返し、今までは何とも言われていなかったのにある事件をきっかけに彼自身がいじめを受けるようになる。同級生の差別的な発言を息子さんは折々に注意はしていたけど、いじめを同級生が受けるのもおかしいと感じ母に相談。日本出身の著者さんは「日本もイギリスも、どうして人間はいじめをしちゃうんだろうね…」とぼやくと、息子さんは「いじめをすることが好きじゃないんだ。人間はきっと『罰を与える』ことが好きなんだと思う。」と感じたようです。
昨今のSNS問題から政治問題やら、身近な人間関係の問題にも深く関わっている示唆だと感じます。自分とは異なるもの、大多数とは違うもの、社会とされる規範に反するものに「罰を与える」ことが多いように感じる、そうする人たちは「正義・倫理・道徳」を主張するし、きっと美徳や正論を主張して実行することはある意味で中毒性があるのではと感じてます。理解や受容は手間もエネルギーもかかるけど、拒否や否定は省エネだろうしね。
まだまだ中年になっても知らなさすぎる知恵や感性がある。知識を広げるとはまた違う、まだまだ学ぶべきことが大人にはたくさんあると思うと気付かされる良書です。
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